Solaris 10のインストールの可否はマザーボードのクオリティ、サポート、特にBIOSのアップデートが続けられているかに尽きる。この点、サポートも厚くASUS、AOpenといった一流どころの、パーツも確かなものを使った440BXマザーボードが、いまだに動く可能性が高い。
そうなると、自作機にSolaris 10をインストールすることが一番有利なのだが、それでは当たり前すぎて面白くは無い。また、主だったマザーボードだけでもいくつあるだろうか、かつBIOS のリビジョンの1つが動作の分かれ目であることを考えると、とうてい評価は不可能である。このため本稿では母数を少なくして、対象をメーカー製マシンに限った。それに、まずはSolaris 10のインストールメディアを読み込まなければならないので、5インチのドライブベイを持ちDVD-ROMドライブが収納できることを条件とした。
選定したマシンはいずれもベストセラーで安価に入手できるし、このうち、コンパクトな機種を選べば、設置スペースをとらない、加えて最近の靜音対策がとられた製品を選べば、自宅で静かにSolarisサーバーを動かすのに最適である。
- Hardware Compatibility List (HCL)
- 私家版HCL
- 本稿作成に使用したマシン本体
- ネットワークカード
- ハードディスク
- DVD-ROMドライブ
Solarisの場合は同じハードウェアが過去のバージョンで動いても、バージョンが新しくなるにつれて動かなくなる傾向がある。この傾向は通常とは逆で、バージョンアップに伴ってサポートするハードウェアが増えるのではなく、ハードウェア要件が厳しくなっていくためである。 特に、Solaris 10 1/06 リリース以降では、ブートローダーにGRand Unified Bootloader (GRUB) を採用している。GRUB は、カーネルモジュールおよび構成ファイルが含まれているブートアーカイブをシステムのメモリに読み込む必要上、メモリ実装は512Mバイト必要である。
Sun Microsystems社のサイトのHardware Compatibility List (以降HCL)にSolaris 10には動作確認が取れたハードウェアが掲載されているが、ここにレポートされたバージョンよりも新しいSolarisは注意が必要であり、さらにレポートされた機種のうち日本国内で流通しているものは限られてくる。
手持ちのマシン、あるいは別途調達したものを含めて私家版HCLを作成して下表にハードウェアの仕様を示す。機種を特定するのに、略称を振った、以降この略称を使用する。
表 1略称 | メーカー | 製品 | マザーボード名 | チップセット | BIOS | CPU | CPUクロック | ビデオカード |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
VAIO | Sony | VAIO PCV-R72 | Asus P2B-AE | Intel 82440BX/ZX | Award Modular (12/07/99) | Intel Pentium IIIE Coppermine | 750 MHz (7.5 x 100) | ATI All-in-Wonder Radeon DDR |
FMV | FUJITSU | FMV-DESKPOWER CC5/665 | Gigabyte GA-6WMZ7 | Intel Whitney i810E | Award Medallion (09/17/00) | Intel Pentium IIIE Coppermine | 667 MHz (5 x 133) | Intel 82810E Integrated |
VL750 | NEC | VALUESTAR PC-VL750R67D1S | NEC G7FBGTA(Tatung or MSI) | VIA VT8363(A) Apollo KT133(A) | Phoenix (01/25/01) | AMD Duron | 750 MHz (7.5 x 100) | NVIDIA Vanta (16 MB) |
Presario | Compaq. | Presario 3500 | UWAVE2 (FIC AZ31) | Intel Solano i815E | AMI (11/02/01) | Intel Celeron Coppermine | 850 MHz (8.5 x 100) | Intel 82815 Integrated |
VL300 | NEC | VALUESTAR PC-VL3004D | NEC G1AQE | SiS 651 | Phoenix (11/22/02) | Intel Pentium 4 Northwood | 2400 MHz (18 x 133) | SiS 315 Integrated |
FLORA | HITACHI | FLORA 330W PC8DG5 | Gigabyte GA-8I865GVPRC | Intel Morgan Hill i865GV | Award Modular (10/22/04) | Intel Pentium 4 Prescott | 3000 MHz (15 x 200) | Intel 82865GV Integrated |
上記ハードウェアから、ビデオがオンボードで無いものはビデオカードを残したが、スロットからすべてボードを取り払い、DVD-ROMドライブを装着して、メモリサイズを512Mバイトに統一して評価を行った。Solaris 10 バージョンは3/05、5/08、10/08、5/09を使用して、インストーラが起動できる(○)か、できない(×)かの結果は下表の示すとおりである。インストーラすら起動できないのであれば、もちろん今後に予定する作業は無理なのであるが、インストールの途中でハングアップするよりも、手間が省けるので余程良い。なお、メモリサイズが512Mバイトを超えて搭載できる機種に768Mバイト、1Gバイトと増やしたが、この場合も変化は無く、表の値に変わりは無い。つまり512Mバイトでだめなものは、増設してもだめなのだ。
表 2略称 | 3/05 | 5/08 | 10/08 | 5/09 |
---|---|---|---|---|
VAIO | ○ | × | × | - |
FMV | ○ | × | × | - |
VL750 | ○ | × | × | ○ |
Presario | × | × | × | ○ |
VL300 | ○ | ○ | ○ | ○ |
FLORA | ○ | ○ | × | ○ |
Screen 3 左からFLORA、VAIO、VL300、VL300、FMV
Solaris 10 の3/05と5/09の2つのバージョンを、下記のマシンで本稿の記述内容の処理を実行した。
3/05 | FMV、VL750 | |
5/09 | VL300、PC-VL5706D |
Solaris 10 3/05の動作検証用に最初にFMVを使用していたが、「init 5」コマンドで(後述)電源が落とせず不便なのでVL750に変更した。「init 5」動作の可/不可の点を除けば両者の結果は同じものである。VL300は1G~2Gバイトのメモリを増設して、CPUを換装したものを使用した。後に「NEC VALUESTAR PC-VL5706D」という機種で同作業を行ったが同結果が得られている、この機種については「VL300」とほとんど基本構成が同じなので仕様は省略する。
本稿は以上のマシンを使用した検証によって書かれている。
ネットワークカードはインストール時に自動認識するものを選んだ、過去にUXIX系OSに強いといわれるベンダーのカードを数点評価したが、認識しない、あるい認識してもその後が続かないなどの理由によりいずれも不調に終わった。一方、安価に出回っているRealtek製RTL8139チップ搭載のカードが好調のため、これを使用した。なお、型番には8115、8129、8139、8165等あって紛らわしいが、動作確認が取れたのは8139である。
ハードディスクはパラレル接続のIDEであれば良いのだが、容量が大きいほど高速の傾向があるので、高容量であり、できれば回転速度が7200rpm以上のものをお勧めする。これは特にCPUが低速の場合には、性能不足を高速なハードディスクで補いたい。容量は40Gバイトあれば本稿の内容を余裕を持って行えるが、それを1台のドライブで実現する。パーソナル環境では、空調の効いたサーバールームにラックマウントされているわけではないのだ、複数台に分ける必要はなく、かえってその発熱のためトラブルが発生する可能性が高い。
本稿で使用したハードディスクは下記のとおりである。
Quantum | QML40000LD-A | 40G |
Seagate | ST380021A | 80GB |
WesternDigital | WDCWD8000BB-22JHC0 | 80GB |
IBM | IC35L120AVVA07 | 120GB |
本稿ではまだDVD-ROMドライブが一般的でなかった時期のPCも対象にしている。Solaris のインストレーションプログラムはDVDイメージで配布されているので、CD-ROMドライブをDVD-ROMドライブに換装しなければならない。また、せっかく換装するのだから、バックアップにも使用できるように、DVDメディアに書き込みが可能なドライブを選びたい。
本稿で使用したDVD-ROMドライブは下記のとおりである。SolarisのcdrwコマンドからRWメディアのイニシャライズ、書き込みができたことを付け加える
NEC | ND-2500A |
TOSHIBA | SD-R5002 |
PIONEER | DVR-105 |
TEAC | DV-W58D |
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